ゴーモクからタボバン登頂、ガンゴトリーへ
平成16年10月10日
朝6時周りが少しずつ明るさを増してくる。
私もスーも寒さで睡眠時間はほとんど取っていないが体の疲れは感じていない。
私たちはサドーのMr.ポリアガギリにチャイを入れてもらいタボバン登頂の出発の準備をする。
私はペットボトルに熱いチャイを入れてもらった(持参した水はもう底をついていた)。
私とスー、ガイドのMr.キャンの三人で7時に登頂を開始する。
私たちは牛の口(氷河のホール)の上の氷河を超えてタボバンを目指し歩き始める。
今回のトボバン登頂ルートです。
氷河の上を横断しトボバンを目指すコースを選んだ。
コースは約4Kmで時間は2時間、往復2時間半を予定している。
遠くから見る氷河は平坦に見えるが現実は岩石がごろごろしている。
また、大きな裂け目が口を開く私たちを待ち構えている。
私は歩き始めてすぐに心臓がバクバク、呼吸はゼイゼイ、空気の薄さがとても辛い。
昨日と同じように歩き始めるとスーとキャンに後れを取り始めた。
15分歩いただろうか、私はバッグとダウンとズボン(寒いので何枚もはいていた)をガイドのキャンに持ってもらった。
身軽になった私(上下トレーナー)は今度は2人のお荷物にならないで済みそう。
天候が悪化してきた。
歩き始めて氷河を越えたあたりから雪が降り始めた。
トボバンを登頂始め4500m地点あたりから雪の降り方がさらに多くなってきた。
4700mですれ違った登山者が頂上の視界は良くなくカイラスは見えないと教えてくれる。
私とスーは「もう少し登ろう」とキャンに言った。
キャンは少し心配そうな顔をしたが「OK」を出してくれた。
4800mか4900m地点に着いた。
急激に天候が悪化しだした。
目の前にトボバン頂上の旗が見える。
私とスーは登頂を断念したことをキャンに伝えた。
降り始め氷河のポイントに着いた頃から視程が急激に悪くなってきた。
キャンは最短コースを取ることを決意したようだ。
このコースは危険な個所が何箇所もある。
氷河の崩壊の轟音が近くで起きる。
キャンは10メートル進んでは私たちにコースを指示する。
キャンの感は鋭く正確だ。
クレバスの開いた氷河を私とスーは乗り切ることができた。
降り積もった雪で何度もスリップをしながら私たちはゴームクに帰ることができた。
そこには心配そうな顔をしたツツの姿が見えていた。
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牛の口を見ながら氷河に向かう | 氷河の上のガイド・キャン(私のダウンを着て) |
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氷河の上のコース | 牛の口の上を歩く |
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氷河を渡りきる | 登頂開始 |
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下を見る(視程が悪化している) | 氷河が削り取った岩肌 |
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トボバンの頂上が目の前、頂上に旗が見える。登頂を断念する私とスー |
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降り始め視界に入った高山植物(真っ赤に紅葉 | 私たちにルートを指示するガイド・キャン |
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氷河にはもうこんなに雪が積もっていた | 氷河の上でスリップを繰り返し何度も手をつく |
私たちは急いでガンゴトリーに向かうことにした。
サドーのポリアガギリに私たちは別れを告げた。
再び訪れることはもう無いかも知れない。
ガイドのキャンがラバを調達に行ってくれるという。
私たちは途中のボウジワサまで歩き始める。
ボウジワサは雪から雹に変わっていた。
私とスー、ツツはラバに乗って下山している。
私のラバは可愛い。
何度かの山小屋を過ぎたあたりから雨に変わった。
気温が高度が下がるごとに上がっているのが実感できる。
カモシカが私をがけの上から見下ろしている。
高山植物は雨に濡れネオンサインのように赤、青、白と小さな花びらを精一杯誇示して輝いている。
私はラバに揺られながら奇岩、行く筋もの滝、ガンジーに下落した巨岩をあきもせず眺めていた。
馬子の歌う馬子唄が哀愁を帯びて耳に優しく私を包む。
山は白い綿帽子をかぶっていた。
もうゴーモクは白銀の世界になっているのだろう。
ガンゴトリーに降りてきたのは4時過ぎだった。
私たちはドミトリーの食堂で熱いチャイ、チャパティー、ダルをランプに下で48時間ぶりに食べた。
もう体はつかれきっていた。
私もスーも最後の下着に着替えて寝袋にもぐりこんだ。
もう私たちには着替えはない。すべての衣類がたっぷりと水を含んでいる。
ツツが私に毛布を調達してくれた。
やっと、暖かく寝れそう!
私もスーもすぐに眠りについた。